I dreamed a dream

桜が咲けば穏やかに花見をして、夏が来れば海やプール、花火大会、秋はハロウィン、冬は苗場でユーミンのライブ。一年前はそんな四季の変化に心を奪われていた。しかし、今は歯車が狂ってしまった。

世間にコロナウィルスの情報が出回った。人々は家から出ることができなくなった。冬が終わりかけている。本当なら夏から始まるオリンピックの高揚感にあてられている頃だっただろう。外では桜が咲いている。テレビでは外に行けない人々に向けた桜の映像が流され、遅く起きた朝、それをボーッと眺めている。

夢を見ていた。今とは違う、本来訪れるはずだった一年の夢。

ある日突然舞い込んで来た無人島移住パッケージの案内。

2020年3月20日。2019年の秋ころに申し込んだ無人島移住パッケージの手続きが終わったという連絡を受けた。何も用意する気力がなかった私は手ぶらで飛行機に乗り込んだ。機内では無人島での生活をイメージさせる映像が流れていた。

春の光。夏の雲。秋の日差し。冬の声。遠い故郷を思い出させるような映像。本来なら、これからの生活に期待を覚えるのだろうが、私はそれらを見ても何も考えることはしなかった。何も感じなかった。

無人島に到着。ガイド役のたぬきが先導し、島の南部にある広場に集まれとのこと。 周りに合わせてついていけば良いのだろう。

たぬき開発の取締役が挨拶をしている。どう見てもたぬきだ。喋るたぬき。ネコやイヌも喋る。まあ、世の中にはそういうこともあるのかもしれない。

たぬき開発の社員からテントが支給される。好きなところに広げて良いという。せっかくなので波の音が聞こえる海岸にテントを張ることにした。

砂浜に杭をうち、テントを固定している。自らのチョイスだとはいえ、台風の時期までにどうにかしないという焦燥感が過ぎる。

は?

浮世の義理も昔の縁も三途の川に捨て、着の身着のまま乗り込んだ飛行機がたどり着いた先は、巨額の借金と労働が待つ蟹工船。そもそも「ベル」というお金の単位を聞いたことがない。一体1ベルは何円なんだ。49,800ベルという得体の知れない数字が私を不安にさせる。浜辺に立てたテントが強風で飛んでいったら、この49,800ベルはどうなってしまうのだろう?

不安そうな私を励ますため、たぬき取締役は「今夜はキャンパファイヤーを囲んで楽しく過ごせ」と命じてきた。まあそうだろう。絶望から逃亡し、借金を踏み倒されても困るだろうからな…。

キャンプファイヤーでは島の名前を決めるというワークショップが行われた。ここにきても他人と関わり続けなければならないのか。そう思いながら辺りを見回す。

私はジビエ島という名前を提案

満場一致で島の名前は「ジビエ」に決まった。

ジビエ(仏: gibier)とは、狩猟によって、食材として捕獲された野生の鳥獣を指し、フランス語である。英語圏ではゲーム(game)と呼ばれる。畜産との対比として使われることが多い。狩猟肉。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

どうぶつたちが集まる島である。ジビエ料理のように多様性を楽しむ島になるよう願いを込めた命名(後付け)に、ネイティブたちは感銘を受けたようだ。犬や猫は自分たちがジビエの対象にならないことを知ってて気楽なようだが、たぬきはどういう心境なのだろうか。

なお、たぬき汁は本当はアナグマ。

ところで、私の名前はモンジである。これは「ももんじ屋」が由来である。

ももんじ屋(ももんじや)またはももんじい屋とは、江戸時代の江戸近郊農村において、農民が鉄砲などで捕獲した農害獣の猪や鹿を利根川を利用して江戸へ運び、その他、犬や狼に狐、猿、鶏、牛、馬などの肉を食べさせたり、売っていた店のこと。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

深い意味はない。

キャンプファイヤーを楽しみ、夜はふけていった。明日からこの無人島でどんな生活が始まるのだろうか…。

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