ラ・ラ・ランド

試写会で観たという友人が「ミュージカル映画シュール」と言っていたのを聞くやいなや、「ミュージカルに何を求めてるの?」という説教をする程度に悪いミュージカルオタクな俺が「絶対観たい」と日頃から強く念じていた「ラ・ラ・ランド」ですが、もちろん公開直後に観に行きましたよ。この映画はラストシーンがとても良かったのですが、そろそろ、その部分も含めた感想を書いても大丈夫ですよね?

クラシックな恋愛ミュージカル映画に現代的な配色を加えた本作ですが、その向こう側にはオールドファンを満足させながら、ニューカマーを歓迎するという野心が見え隠れしているようです。アカデミー賞を総なめにした理由もその辺にあるんじゃないかな。一部の有識者たちが「老人たちを満足させたから」みたいな事を言っているみたいですが、それよりも、ミュージカル映画の可能性を再発掘したことや、マーケットを広げたことが、映画界において大きな価値を示したというように感じます。その効果は日本でもあったようで、本作品は春休みの映画興行を牽引しているようです。

『ラ・ラ・ランド』37億円超え異例のヒット 春休み映画興行30億円超え4作 | ORICON NEWS

批評を見ていると、多くの方が「ストーリーが無い」というのですが、「オペラ座の怪人」や「キャバレー」ほどメッセージ性はないものの、「夢を叶える人と夢を見つける人の対比」や「成功と後悔」など、人生における様々なターニングポイントを脚本にのせていますし、ストーリーを追いかけながら音楽も楽しもうとすると、このくらいの情報量じゃないと途中で飽きていたと思います。「雨に唄えば」くらいの軽さのミュージカル映画が好きなので、とても丁度よいと感じました。

ミュージカルっていうのは半分くらいファンタジックな場面で構成されるのですが、映画館でスクリーンに乗っちゃうとか、天文台で空を飛んじゃうとか、そういうシーンの一つ一つがとても素敵にクリエイトされてて大満足です。

こういうのが好きかどうかがミュージカルオタクかどうかの分かれ目かもしれませんね。ミュージカル俳優の山崎育三郎さんがテレビで、「美女と野獣みたいに突然みんなが歌いだしたりしないかなって思う時がある」という話をしていたのですが、そういう「ありえない」「おこりえない」場面を実際に映像に起こすのを面白いと思うか、難しいと思うかがこのミュージカルが受け入れられるかどうかの分岐点だと思います。

ミュージカルシーンが鮮やかに描かれている一方で、エピソードが展開するシーンからは、どんどん色が失われていくので、ミュージカルシーンが印象に残るのかもしれませんね。特に秋から冬にかけては、ほとんどの色彩が失われていたのですが、それはラストシーンの驚きに結びつく演出だったのかもしれません。

そのラストシーンですが、とても濃厚なリプライズの時間になっていて、その演出がとても懐かしさを感じさせる一方で、大胆で現代的なアレンジになっているので、驚きと感動がスクリーンから押し寄せてくるかのようでした。ミュージカルのリプライズは、その歌が最初に歌われた時から状況が変化したときや、同じシーンを別な人から見たときに流れるのですが、このリプライズシーンは、その役割を演出に用いたのでしょう。

この物語は、主演カップルが、夢をかなえる人と夢を見つける人に分かれ、対比する形で展開するのですが、ラストシーンは、それぞれの役割を入れ替えたらどうなっていたかを表していて、最終的に「後悔と未練」が連続して訪れるんですよね。見ている間は涙が止まりません。「もう一曲聴いていく?」と質問されるも、「もう結構」と立ち去るのは、カーテンコールを見なければ夢はずっと続くという、とてもミュージカルらしい悲しく、残酷で、希望に満ち溢れた選択だと思うんですよ。

「ミス・サイゴン」では「映画は夢」と歌いますし、「アメリカンドリーム」は煙のように消えちゃいます。「Wiked」では「思っていたものとは違うけれど、これはこれで幸せ」と歌いますし、「コーラスライン」では「夢を見るチャンスをちょうだい」と訴えます。「ラ・ラ・ランド」は、「でも夢ってまた見つかるでしょ?」という希望的に捉えています。もしかしたら、このお話は、悲劇でも失恋でもなく、現代的なラブストーリーのハッピーエンドなのかもしれません。

 

 

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